私の家は区画整備の関係で家を立ち退くことになり、近隣の家の人もどこかに散っていった。でも、ほとんどの人が家賃の安い団地に入った。あまり裕福とは言えなかった私の家も団地に入ったんだけど、どんだけ貧乏なの?と学校で絶賛馬鹿にされた。親が少しでもいい高校に行かせるためにお金を貯めようとしてくれていたので、学校でのことは言えなかった。

(同級生とせめてお祭りで会いませんように!)

地元の夏祭りだけは邪魔されたくなかった。でも、神様は私の願いを聞き入れなかったようで、帰りに鉢合わせた同級生にまた馬鹿にされた。相変わらず接してくれる友達に申し訳なくて、気が付くと涙が出てしまった。なんだか家に帰りたくなくて遠回りをして帰ろうとしたら、友達が夜の散歩に付き合ってくれることになった。
しかし、遠回りに選んだ道は馬鹿にしてきた同級生の家の方角だったらしく、途中でまた鉢合わせてしまった。「道草かよ!生活指導の先生に言いつけてやるからな!!」と、罵倒された。言い返そうとしたが、友達の一人が急に私ともう一人の友達の腕をつかんで走り出した。
ほぼ同時に、黒い影が覆いかぶさって同級生が見えなくなった。
その距離にして電柱一本分しかなくて、よく見ると鋏を持った下半身が露出した変質者だった。
死もの狂いで走って走って無言のままそれぞれの家に帰った。


その次の日、ニュースで同級生の死と犯人逮捕を知った。


犯人が捕まってよかったと思った。
同級生の死因は出血多量だった。
誰も何もしなかったみたいだけど、いやな奴がいなくなって最高の夏休みになった。

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