水は目を閉じて、口を開けっ放しにして涎を垂らしていました。
それなのに口を閉じている時のような低いうなり声を出し続けています。
「んーーーーんーーーーんーーーー」
俺たちは3人で清水を担いで車まで戻りました。
車中でも清水は唸りっぱなしで、俺はそれがものすごくイヤでずっと耳をふさいでいました。

清水の家に着いたのは朝7時頃でした。
起きたばかりのおやじさんとおばちゃんに事情を説明すると、二人とも大慌てで、すぐ病院へ連れて行くと言いました。
俺はムチャクチャ怒られるんだろうな、と思っていたのですが、おやじさんに「今日はもう帰れ。」と言われただけだったので、正直ホッとしました。
でも、その後はいろいろ大変でした。
清水の家が俺たちを訴えるとかいう話まで出ていたのですが、なんやかんやでその話は消えてしまいました。
というのも、清水の家が地元から引っ越してしまったのです。
清水がその後どうなったのかはわかりません。でも、多分死んでいると思います。
あいつはまともに鏡を見ていました。只で済むはずがないのです。

俺はあのあとひどい足の痛みに悩まされました。
今も一年のうち300日ぐらいは家で横になっているか車椅子の生活です。
それが原因で学校を辞めましたし、普通の仕事には就けません。
足の筋肉が痩せてしまってズボンがガバガバで、なんだか泣けてきます。
原田は仕事で東南アジアへ行っている最中に狂犬病に罹って死にました。
土壁を爪で削り取って食べていたそうです。
石川は他の3人の顛末を見て怯えきって家に閉じこもってしまいました。
人に聞いた話では、精神に異常を来したものの、病院には連れて行ってもらえず、ずっと家から出ていないようです。

今、気になるのはこの話を聞いた人のことです。
俺と原田と石川は、清水の家から帰る途中で、あの小屋であった話は絶対人に喋らないようにしようと決めました。
言いだしっぺは原田です。原田は清水を助けようとした時に一瞬鏡を見てしまったそうです。
何を見たのかは、俺たちにも教えてくれませんでした。
とにかく、俺は決まりを守って両親にも警察にも小屋の中でのことには触れず、清水が一人で小屋に入っておかしくなって出てきたって風に話しました。

でも2年前に一度、チャットで知り合った女が霊とかそういうのに敏感&興味津々だったので、リアルで会って小屋の話をすることにしました。
その頃俺は足の具合が悪かったので、

通常版で読む