あれは、小学3年生の時でした。
その日は珍しく、皆よりも遅く給食を食べ終え、友達の待つ運動場へと向かうべく
急いで昇降口へ走りました。
昇降口へと近付くにつれ、いつもの皆がワーワーと騒ぐ楽しそうな声が大きくなっていきます。
廊下も、楽しそうな先生と児童の声でいっぱいです。
でも、おかしいんです。
声は聞こえるのに、外も中も人が通らない。
右を見ても、左を見ても、誰も通らない。
私は気味が悪いと思い、手に持っていた靴を急いではき運動場へと出ようとしました。
そこで私は立ち止まった。
目の前が運動場ではなく、森になっていたから。
後ろを振り返っても、360度見渡してもソコは深い森の中でした。
「なんで」そう言って前を向くと
数メートル先には先程まで無かった古い大きな井戸。
私は後退りした、嫌な汗がダラダラと流れていく。
瞬きをしたら、井戸からびしょ濡れの女の人が出てきていた。
その服装は今でも明確に覚えています。
結われているが乱れている黒髪に白装束。
まるで江戸時代の女の人みたいで。
その人は瞬きをする度に近付いてくる。
でも怖くて何度も何度も瞬きをしてしまう。
その人がもう目の前にきている。
顔は見えないけど、雰囲気が違う。
青白い手が、伸びてきた。
『もう駄目だ、助けて…!』
そう思い固く目を瞑った。

そしたら聞こえてくる皆の笑い声。
ハッとして左右を見たら、遊んでいる子と廊下を走りながら通る子達。
戻って来れたんだ、でもココは危ない。
動かなかった足を頑張って前へと出して私は走って外に出た。

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