なつは、血が着いたまんまでずっと携帯を私に向けている。

(なつ)何か喋ってよ。
(私)…

喋れるはずがない。
精神異常者が目の前にいる。
何か喋れば殺されるんじゃないかと。

しかし、何かを喋らないと殺されるんじゃないかと。

(私)…どうやって私の仕事場わかったの。

なつはニタニタしながらこちらに寄ってきた。

(なつ)コレ見てよ。

※あいの写メ

なつは私の写メのホルダを作っていたのだ。
身体から、血の気がサーッと引く。

友達と遊んでる時の写メ。
通勤途中の写メ。

(なつ)これがオレの気持ちだよ。

ニヤニヤして話す。
気持ちもなんも、ただのストーカーだろ!しかも、22歳と言っていたが、あまり若さのない感じ。

(なつ)俺は今日誕生日でもう23になるけど、あいは俺が守る。
でも、逃げたりしたら困るから、こうやって縛りつけておかなきゃならないんだ♪
そうだ!指輪を買わなきゃ!グッチでいいよね??俺グッチ好きなんだー!

ピロリラリン♪

灯油が切れる音だった。

なつは怒りに満ちた顔になり、
ストーブを蹴りだし、訳の分からない事を言い出してる。

(なつ)なんで、灯油切れるんだよ!あいが寒がるだろうが!


もう私は、気が可笑しくなりそうだ。
手足を縛られ、身動きも取れず、
泣くのを通り越して、どうやって逃げ出すかしか頭にない。

そんな事を考えてたら、
なつが不貞腐れた顔をして
こちらに近寄ってくる

(なつ)灯油買ってくるわ。
絶対変な行動起こすなよ。わかったな。

(私)わかった

よっしゃ!大きな声出して助けを呼べる!


幸い、改造車だからマフラーは爆音。
音が聞こえなくなったら、行動に移そう。

(なつ)じゃあ、いってくる。
(私)いってらしゃい

バタン
ガチャ
ガチャガチャ

ドタドタドタドタ…

ブォーン
ボボボボボ

車の音はゆっくり消えていく。
そして、車の音が消えた時に私はかなり大声を出した。

(私)誰か助けてください!!助けてください!!

壁もドンドン足で叩いた

(私)お願いします!!助けてください!

廊下に足音一つない。
隣の人には絶対に聞こえるはずなのに
全く出てこようとしない。
なんなの!?このアパート!!
こんなに叫んでんのに、誰も出てくる様子ないし!
もう、どうしようもなかった。
無残に壊された携帯は、テーブルの上にある。
もう心は無の状態。
仕事の疲れも

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