小学生の時に亡くなった、私を可愛がってくれていたお兄ちゃん、母の師匠の息子さんのお話を書きます。

ある夕方、地元のニュースで流れた事故の話。地元大学のボード部の人がある湖でボードの底を浸水魚に突かれて落ち、一人だけ心臓麻痺で亡くなった…お兄ちゃんの名前が。目を疑いましたが、紛れもなく事故でした。母が通夜に行きました。

家に帰ってきた母は全くその話をしませんでした。ただ昔から聞いていたのは、S家の長子は成人せずに死ぬ、だから子供は2ー3人は要るということ。私はその家の三男と結婚して欲しいという要望を子供の頃から受けていたので知っていたのです。
やはり長子が亡くなった…。

49日、県外のその湖におばさんがどうしても私を連れて行きたいと言いました。私はもちろん行きたかったです。なのに母が頑なに断わりました。

なんで?お母さん…

ごめん、ずっと話さなかった…
お兄ちゃんが亡くなった前日の部誌を見せられたの…通夜に
あんなに明るい子だったのに、誰もあの日記を信じられない
「血染めの湖」というタイトルで始まった
事故当時と同じ描写、でも魚ではなかったんだよ…ボード部の練習中「ゴン ゴン」と音がする
何かが船底にぶつかる音
ザバッと目から上だけが水面に出てきた…目だけギョロリとした髪の長い女だ
水面に彼女の長い髪が漂う
大きな口まで出してニマっとすると、「ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン…!!!」船底を突いた
11月3日、水は冷たい
岸まではすぐ、なのにズルズルと水の中の髪が自分の足に巻きついて沈んでいく…そして湖は一面血の色に変わる
そんな部誌が残されていたの
怖くって…おばさん達があなただけでml湖にと言い張るのも異常で、49日にあなたも引っ張られないか落ち着かなくて断わり切ったの

あの人がサイコみたいな文を書いたのには驚きました。9歳の私はゾッとしたりmも。

それから20年が経ち、父が足を切断してそれでも色々な行事に出なくてはいけない頃。次の行事は11月3日、そんな時夢を見ました。お兄ちゃんの事は忘れていました。

私は暗い雨の中、走っていました。

何度走ってもお兄ちゃんの家にたどり着き「おばさーん おばさーん」と呼ぶ
暖かい家の光、おばさんやその家族の笑い声だけが聞こえる
誰も聞かない!雨宿りが出来ずまた走るがその家にたどり着く
暖かい家と笑い声、馴染みのある声
なのに何度叫んでも届かない
駅北のその家か

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