これは僕が学生だったころの体験です。
ある夏の夜、その日に限ってすごく寝苦しかったのを覚えています。
冷房を付けているのになぜか蒸し暑い・・そのとき体の上から下に向かって何かが吹き抜けていくのを感じました。

そして次の瞬間、体が引きつったように動かなくなったのです。
指一本動かせず、声も出せません。
人生初の金縛りでした。
何とか目だけは動かせたので、周りを見回してみると僕が寝ているすぐ横に青白い人影が正座していました。

その人影は輪郭だけだったので男か女かも分かりません。
ですが正座しているのはなぜか分かりました。
そしてよく見ると、右手がゆらゆらと揺れているのです。
それはオイデオイデをしているようにも見えましたし、頭を撫でるときの仕草のようにも見えました。

僕は恐怖のあまり、固く目を瞑って「南無妙法蓮華経」と心の中で唱え続けました。
どれぐらいそうしていたでしょうか。
しばらくすると体から何かがフワッと抜けていく感じがして、金縛りが解けました。
すぐに辺りを見回しましたが、もう人影は消えていました。
その後すぐに母の所へ飛んでいき、事情を説明しました。

笑い飛ばされるかと思いましたが、母は意外にも真剣に聞いてくれました。
でも人影の正体は分からず仕舞いでした。
あれは一体、何だったのでしょうか。

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