約12年前にさかのぼります。

当時、主人と子供2人( 2歳と0歳)と私は、主人の実家のある長野県へ引越しました。
義母は子供が苦手なようで、ひと悶着あった後貴方達だけで生活してほしいと言われ、実家から車で10分程度離れた所にある新築アパートに再度引越し。

北向きの玄関で、ドアを開けても周辺は真っ暗。廊下があり、両サイドには寝室とした部屋と、お風呂場とトイレ。
突き当たりにダイニングキッチンがあり、左隣にリビング。

この、玄関からダイニングキッチンに伸びる廊下は、先程も言ったとおり本当に真っ暗で、どの窓を開けても陽が入らなかったんです。
そのせいか、玄関先と寝室は、そばにお風呂場があったからか常に湿っぽく、いつも除湿機をかけてないといけませんでした。
手をぬいたら、すぐにカビだらけ…

そんなアパートでも、新築ということであまり気にせず生活が始まりました。



主人は仕事へ行き、上の子は幼稚園へ行き。
下の子と私は、のんびり午前中を過ごしお昼を食べ、片やお昼寝 片や片付け。
鼻歌なんぞ歌いながら洗い物をしていた時でした。

流し台右奥の角辺りに、人の頭頂部が見えたんです。
視界にはその角の右側に廊下が入るんですが、その分の視界が埋められるように人の頭。
何度か視線をそっちに合わせてみても、頭はない。
視線を逸らすとみえる。
実際に直視したわけじゃないのに、自分の脳にはおかっぱ頭の10歳くらいの女の子が浮かび上がるんです。
見たわけじゃないのに。

何だかかわいそうな衝動にかられて、怖がることもせず普通に洗い物を済ませました。

そんな日が何日か続きました。

それまでの間にも、寝てる時に寝室入口に男性が浮いて立ってるのをみたり、除湿機を回しても壁のカビが増えていったりと、不思議なことがいくつかあり。
もしかしたら、私も疲れていたのかもしれません。

ある日の昼下がり。
いつものように洗い物をしていると、またあのおかっぱ頭の女の子が見える。怖がらず続けてると、廊下のほうから、

ドロドロドロドロドロドロ

と聞こえてきました。

泥を表す時に出す効果音のような。


そっと廊下に目をやっても、普通。
いつもどおり暗い。
昼寝でもしようかと目を逸らそうとしたその時。
廊下が歪み始めたんです。

いや、自分の目には普通の廊下なのに、脳にはどんどん歪んでドロドロの道が浮かぶんです。
何と言ったらいいか。

目の裏の

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