路地裏で、花屋を見つけた。
ショーケースの中は、美しい花々で彩られていた。
その中に、少女がいた。
透き通るように白い肌をした、美しい少女だった。
目を閉じたまま、眠っているかのように体育座りをしていた。
「花の一種ですよ」
店主の男は言った。
なるほど、よく見れば肌は花弁で成形されており、しっとりとした嫋やかな髪は細い蔓のようだ。
それに、何とも言えない甘い香りがする。
「美しいでしょう。私も最初に見たときは驚きました」
それはそうだろう。
こんなに美しい花なんて、他にはないだろう。
「譲ってくださいませんか」
「申し訳ございませんが、非売品でして…。」
私はどうしてもこの花が欲しくなっていた。
「種は採れないのですか」
「分かりませんな。何せ今は一鉢しかないものですから…。」
私は改めて花を見つめた。
頰はほんのりと紅を差したように赤く、温かみを帯びているようだった。
私はそれから毎日、仕事帰りにその花屋に立ち寄った。
「いいものをお見せしましょう」
ある日、花屋の主人は言った。
そして、ガラスの水差しを持ってくると、花に水を振りかけた。
すると、何ということだろう。
花の少女が少し上を向き、手で水を受け止めたのである。
彼女は愛らしい笑みを浮かべて、水を身体に注いだ。
注がれた水は少女の滑らかな肌を滑るように流れ落ち、吸い込まれた。
「この花は、どういう訳か花弁から水を吸い取るらしい」
主人は水差しを置いた。
「見事なものでしょう」
私は声が出せなかった。
ー
その頃には、昼夜常に花の事を考えていた。
あの花は。
あの花は。
あの少女は。
そしてまた、仕事帰りに花屋へ向かう。
「喜んでください、お客様。」
主人は店の奥から、布をかぶせた何かを持ってきた。
「何です、それは。」
「あの花の雄花が手に入ったのです。これで種を採ることもできるでしょう。そうしたらすぐあなたにお譲りしましょう。」
「見せてください。」
あの美しい花の雄花なのだから、きっとまた美しい少年の姿の花なのだろう。
主人が布をめくるのを、私は期待を込めて見守った。
だが、その姿は私の期待を大きく裏切るものだった。
「…何だこれは」
「あの花の雄花です」
醜く皺の寄った肌に、潰れたような顔。焼け爛れたように数本しか生えていない蔓の髪。
「こんな醜い花