俺にはなんの取り柄(とりえ)もない。
あえて自慢できることがあるとすれば、学年男子の2大有名人と幼なじみだということだけだった。
1人はサッカー部を全国まで導いたヒーロー的存在、英雄の「A」くん。
もう1人は学年一のイケメン、美少年の「B」くん。
この2人から「学校の秘密を探ろう」と俺に持ちかけて来た。
俺たちの通っている中学校にはある噂がある。
【この中学校には『秘密の通路』がある。そこは異世界に繋がっている】、と。
まぁ、ありがちなヤツだ。
ある日、英雄のAくん、美少年のBくん、なんの取り柄もない俺。幼なじみの3人は『秘密の通路』とやらを一緒に探しに行くことになった。
A「何かこうゆうのって、冒険みたいでワクワクするよな」
B「例え見つけることができなくても、僕たちだけの思い出になるからね」
俺「本当に探すの?やめるなら今の内だぞ…」
A「大丈夫だ。何かあったら俺が守ってやるよ」
B「心配いらないよ、僕たちが付いてるじゃないか」
二人とも意気揚々としていた。ホント迷惑な話だ。
中学生になってまで冒険ごっこ…。
俺はそんな気サラサラねーってゆーのに。
とか思いながら俺は言ってやった。
俺「ってゆーか、その『秘密の通路』だっけ?どこにあるとか、当てがあんのかよ?そもそも存在すら怪しいじゃねーか」
A「何言ってんだよ。最初からあると分かってたら面白くもないし、何より夢がないだろ?」
B「そうだね。それにあるはずのないものを探すことにロマンがあるのさ」
俺「けっ」
俺は自分のちっぽけさに毒づくことしかできなかった。
A「それにな、実は もうある程度調べは付いてるのさ」
Aはドヤ顔でそう語る。
B「そうなのかい?さすがAくんだね」
おいおいお前ら、夢とロマンはどこに行ったんだよ。
そんなちっぽけなことを思いながら、Aの話の続きを聞くことにした。
A「外柵近くの茂みに鎖で封印されてある扉があるって噂、知ってるか?」
噂だらけだな、この学校は。
俺「茂みの多いあの場所は、スズメバチがいるから近づいちゃイカンと先生たちが言ってたけど…」
Aが片目を瞑り、人差し指を立てて「チッチッチ」と左右に振った。
気取ってんじゃねーよ。と俺は思った。
A「違うんだよな、それは口実だ。『秘密の通路』を隠すためのな」
何を言ってやがんだ、この男は。