
夢で会った女性
田舎の故郷から都市に出てはや1年。
勤め先の会社の仕事も人並みにこなせるようになり、同僚との関係もよく、世間話をするほどの仲になった。
近所の自分に対しての評判もそこそこで、「◯◯さん、おはようございます」と気軽に言える関係になっている。
生活にも不自由してはいないが、独り暮らしが続くと寂しくなる。
会社と近所にしか話せる人はいないので、喋り好きな自分にとって夜はきついものだった。
時間が経過し、12月の2日。
急に熱が上がり頭痛もひどく、とても仕事にはいけない状態に陥った。
会社に休暇をもらい、1日のほとんどを寝室のベッドで過ごした。
会話できる相手もいないので退屈し、熱を恨んだまま1日を終えた。
気がつくと、自分は野原に立っていた。
周りには背の低い小さな花がたくさん生い茂っていて、空も雲1つない快晴で、とても綺麗で幻想的だった。
花を見ながら前へ前へと足を進めると、急にドンッと何かにぶつかる。
頭を抱えながら前を見るが何もない。
手で触れてみたら固い感覚はあるので、何かしらに遮られているようだ。
その見えない物の奥を見てみると、ある光景に息を呑んだ。
見えない物の向こうに女性がおり、それも自分が見た女性のなかでも一番と思えるほどの綺麗な女性だった。
女性は前から見て左の方向を向いていて、何かを見ている様にも思えた。
しばらく女性を見ていると、女性は自分の存在に気付いた様で、自分の方を見た。
一瞬ドキッと胸が鳴った。
横顔も綺麗だが、前から見るとより綺麗に見えるので胸の鼓動も大きくなった。
女性はクスッと笑った。
顔が赤くなって鼓動も最高潮に達した。
ジリリリリィン!!
目覚ましの音でハッと目が覚めた。
そこに野原と女性はなく、あるのは見慣れた自室だった。
熱は昨日と違って嘘のようによくなり、感覚も普通の状態にもどっていた。
夢にしては感覚がはっきりとしていた不思議な夢だった。
不思議な夢だった。
今日は休日の日だったので、自分復活記念に街の大きな公園に散歩にいくことにした。
日曜日ということもあって人も多く、親子連れもたくさんいた。
趣味の人間観察をベンチで楽しみ、子供の楽しそうな顔、ジョギングをする老夫婦、何かで盛り上がっている学生、夢に見た女性とよく似た女性、色々な人がいた。
自分は思わず「あれっ?」と声を出しそうになった。
夢に見た女性とよく似た女性がそこにいて、自分の方に近づいて来るからだ。
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