俺がびっくりして、
えっ!?と声を上げると、Nは、
「建て付けが悪くてな、気にしんといてくれ」 と言う。

Nの言う事に納得しつつも、階段を昇る度に返ってくる振動に気味の悪さを感じ、
俺は何となく手すりに手をかけようとした。

「手すりに触るなよ、」
Nが振り向く事なく俺に言ってきた。

普段温厚なNらしくない命令口調だったので、俺は不思議に思ったが、

慌ててNが、
「すまん、手すりには触らんといてくれ、頼むわ。」
と言い直してきたので、
それ以上の事は聞かない事にした。

再び階段を昇り始めるのだが、やはり階段の小さな振動には慣れる事はできない。
階段を昇って8、9段目くらいだっただろうか、

階段に足を乗せた途端、
ゴツンッ!!
と、今までと比にならないくらいの大きな振動が俺の足の裏を叩いた。
その振動に思わず仰天して、俺は咄嗟にNに触れるなと言われていた手すりに手をかけてしまった。

あっ…

「おいっ!」

少しの間も無くNが凄い形相でこちらを振り向く。

それとほぼ同時、階段の全ての段が
ドドドドドドドドドドドドドッ!!
と振動した。
全身に鳥肌が立ち、恐怖におののく中、俺は直感した。

大量の何かが、階段の板の裏を踏み鳴らしている。
それも厨房の俺の足が振動で浮く程、かなり強い力で。
涙目の俺は前にいるNの脚にしがみつき、振動が止むことを願った。

振動していた時間がどれだけのものだったかわからない。
あれだけ強く揺れていた階段が急にピタッ。っと止まったのだ。

といっても、俺の方はgkbrしまくってて、とても立てるような状況じゃなかったのだが。
終始立ち続けていたNは、一度深いため息をして、
「降りよう」と俺に言う。

呆気にとられた俺に、
「俺の部屋に入る気なくなったやろ?」
とNが俺を起こしながらそう言う中、俺はただ頷くしかできなかった。
俺がNん家の玄関から出る時、
「階段の事、皆には言わんといてくれんか?」
とNが言ってきたので、俺は絶対に言わない事を約束した。

大学に入る辺り、Nは親の都合で東北の方へ引っ越しする事となり。
Nの家族はあの家から離れた。

といっても、Nと俺はまだ繋がりがあり、今でもたまにNの新しい実家の方へ遊びに行ったりする。
新しい実家になってからは、Nもその両親も俺が家に上がる事

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