その日は私の所属するサークルの打ち上げだった。
自宅から少し離れた駅前、繁華街の居酒屋を数件はしごした後
解散となり各々帰路についた。既に深夜1時を回っていた。

車で来ていた私はネットカフェに泊まる予定だったのだが、
ゴールデンウイーク中ということで満員。仕方なく車の中で酔いを覚ますことにした。
車を止めたのは繁華街から少し離れた格安で有名な立体駐車場。
これが電気代をケチっているのかとにかく薄暗く、エレベーターも動かない。
仕方なく階段で3Fまで上がり、自分の車に乗り込みシートを倒し眠ろうとした時、ふと気づいた。
夕方にはほぼ満車状態だった駐車場が、自分の車と向かいのワゴン車しか止まっていない。
そういえば1Fも2Fもすっからかんだったなと階段を上ってきた時のことを思い出しながら、
なんとなくそのワゴン車を薄目で見た。

女が乗っていた。
異様なのはその姿だった。目と口を大きく広げてこちらを見ていた。
髪はぼさぼさで赤い服を着ている。
なぜだかわからないが私はそのまま眠ったふりをした。起きているのがばれたら殺される気がした。
薄目でちらちら見張っていたが、女は微動だにせず未だこちらを凝視している。
一時間くらい経過したころ、車内は蒸し暑くなり、汗が頬を何度も伝った。
頭がぼーっとして意識が飛びそうになった時、女が車を降りてこちらに向かってゆっくり歩いてきた。
逃げようにも恐怖で動けず、薄目で様子をうかがうのがやっとだった。
運転席の横に立つと顔を窓に近づけノックをしてきた。本当に眠っているのかを確認するように
何度も何度もノックしてきた。もうその時は薄目ではなく完全に目をつぶっていたのでその時の様子は
よくわからない。

どれくらい経ったのかわからないが、気づくとノックの音は止んでおり、
あたりが明るくなっているのが目をつぶってもわかる状態になっていた。
恐る恐る目を開け、女がいないことを確認した後、逃げるように帰った。
その後私自身に何か起こったわけではないが、翌年立体駐車場は閉鎖になった。
今も建物自体は残っており前を通るのが今でも怖い。

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