友人のTは 二つ隣の町に仕事に行っていて 行き来する道は山の方が多い。

信号機の多い 県道を通るより 山道の方が多少 寝坊しても 仕事開始時間までには スムーズに着けるからだと言ってました。

たまに 濃霧で前が見にくい事もあるそうですが…そこは 何年も行き来している道 勝手が分かってるから怖くはないと言っていました。

そんな Tから 電話が掛かって来たのは 小雨が降る 少し肌寒く感じる春先の季節でした。

時間は 午後7時を少し回っていたでしょうか…電話に出ると 少し焦っている様な 何が起きてるのか?分からないと言った感じの口調でした。

T 「仕事 終わって帰ろうと車走らせてるんだけど……何かいつもと違って 同じ所を回ってる気がするんだよ…何これ?」

私 「寝ぼけてる?」

T 「起きてます !! それにね いつもなら 車結構走ってるのに…今日は一台ともすれ違わないんだよ…。」

私 「あんた 定時だったよね?もう7時回ってるけど?」

T 「だから !! 帰れないんだって !! 」

私 「霧が出てる?」

T 「出てない。」

私 「雨降ってる?」

T 「降ってない。」

私 「今 どの辺りにいる?」

T 「分かってれば言ってるって?! 」

私 「大体でいいよ。」

T 「多分 ○○峠辺り?」

私 「何かにぶつかった感じ無かった?」

T 「何も無い。」

私 「回りの音 何か聴こえる?」

T 「ちょっと待って 窓開けるから……何も聴こえない。聞こえるのは 私の車のエンジン音だけだよ。」

私 「山道に入る前に お地蔵様あるよね?」

T 「うん。」

私 「お地蔵様の方向いて 何か言ったか 思ったりした?」

T 「ううん。何も 歌は唱ってたかも…。」

私 「歌は関係ない。」

T 「も~ 家に帰りたいよ~。」

私 「誰かに恨まれてるとか無い?」

T 「エェエーッ 恨まれてんの?私 ‼」

私 「恨み…というか…妬みかな?」

T 「分かんないよ~…。」

私 「そっ?ならいい。あんま関係無さそうだし。」

T 「関係無いこと言うなぁ‼ ね~どうしたら帰れるのぉ?」

私 「あんた……生きてる?」

T 「はぁあ?生きてなきゃ話して無いでしょ?……あっ…あんたは別か…えっ?私 死んでるの~…‼ 自覚無いけど…。」

私 「んん~…?」

T 「何?何 ⁉ 」

私 「分かった。

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