私は、よく女の子の友達とドライブに行きます。
私が運転して、他の人達は助手席か後部座席です。
ですがこの日は、一人の女の子と二人きりでドライブをしていました。
その人はKといいます。
Kは、その時まで静かに乗っていたのに、突然しゃべり出しました。
「怖い話、しよっか?」
Kはいわゆる“視える人”です。なのでそういう話をよく知っていますし、よく話しています。
Kが言って、私は「嫌だ」と即答しました。私はあまり驚かないほうですが、万が一驚かされて、運転をミスったら大変な事になりそうだからです。それに道、暗いし……。
「あのね、ドライブ中の話なの」
Kは、私が嫌だと言ったにもかかわらず、語り始めました。
しかもその話の選択。今する話かよ。
「友達から聞いた話でね、今みたいに男の子一人、女の子一人でドライブしてたの」
彼女の話に早くもびびっているのか、足がびくっと震えました。
「そうしたらね、女の子が、今まで静かにしてたのに、急におしゃべりしだしたの。ぺらぺら、ぺらぺら。止められても、ぺらぺら、ぺらぺら」
頬を冷たい汗が流れていきました。
また、足がびくっと震えます。
「おしゃべりは全然止まらない。いつまで経ってもぺらぺら、ぺらぺら」
Kは楽しそうです。
「何分か経ったらね、女の子は急におしゃべりをやめて、ぽつっと言ったの」
Kの語る声が冷たくなり、私の汗も更に冷えました。
「『さっきしゃべるのをやめなかったのは、あなたの足元に幽霊がいて、目を合わせたら大変だって、思ったからなんだ。ごめんね』」
Kの声はやっと止まり、するとぽつりと言いました。
「あのね、この話、友達から聞いたっていうのは、嘘なの。私が体験した事」
そうして、何秒経った頃でしょうか。
Kが、にこりと笑いました。


「体験したのは、ついさっき」

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