眠れない、、、、

その原因は、夏の暑さと昼間聞いた怪談話だった。



「うちの職場、出るらしいよ〜www」

張り切った様子でパートのおばちゃんが話してくる。

「えー?やめてくださいよー何処かで何かを見たんですか?」

日差しの強い猛暑の昼間、タオルで汗を拭いながら答える。
ひと仕事終えて、おばちゃんとビルのテラスで一服をしていた。

正直興味は無かったが、私も暇だったので話題提供は有り難く応じる事にした。
ビルの清掃員の仕事を始めてから、このおばちゃんが相方になる事が多い。
現場によっては作業が早く終わり、時間調整と言う名の暇潰しが行われる。
おばちゃんとも既に何度も現場が被っていて、話のネタも尽きてきた頃だった。

「このビルにいる“何か”が何らかのかたちで数字を伝えてくるんだって。10まで数えられるとそれを聞いた人はいなくなるんだって。
それは様々な方法で数を伝えて来て、人の声だったり物音の回数だったり、眼に見える数字とか。
ごく自然に、でも確実に意識できる様に数字を伝えて来るらしいよ。」

おばちゃんは急に声のトーンを落とし、雰囲気を演出しながら話してきた。

何かの何らかのって、、、、

真相を知った人がいないが故、曖昧な表現になる。
良く有りがちな人が消えると言う、怪談というか都市伝説に近い内容だなと、暑さに働かない頭で考えていた。
おばちゃんは更に続ける。

「それでね、これを聞いた人はその日中に数字を伝えられて、10まで行くと、、、、ぷっ、あはははっ!
ごめんねーこの話は昨日、このビルの5階のオフィスのOLさん達が話してるのを聞いたの。
4人ともガクブルしちゃって、私3て聞いちゃったーとか顔真っ青にしちゃってwww
あー因みに助かる方法は、次の、、」

コンコン!

ビクッとして振り返るとテラスの内側から、怖い顔をしたスーツ姿の男がガラス張りの部分をノックしていた。
私はおばちゃんに耳打ちした。

「やばい、本社の人来ちゃった!行きましょう。」

時々抜き打ちで来る、清掃会社の本社の人間に見つかってしまった。
私とおばちゃんは慌てて作業に取り掛かる。
とは言っても後片付けしか仕事は残っていない。
適当に業務に取り組んでいる様子をアピールしつつ、何とか本社の人をやり過ごす事が出来た。

「伊藤さん、あと1時間有りますけど、ちゃちゃっと片して上がっちゃいましょう!」

おばちゃんの名前を呼び、彼

通常版で読む