“おたまじゃくし” じゃなかったの?
これは私が小学三年生の時の話です。
真夏だったので、夏休み間近だったと思います。
その頃、毎週、土曜日の夜に縁側で かき氷を
食べながら涼むのが楽しみでした。
ある土曜日の夜の事、いつもは祖母も一緒に
涼んでいたのですが、その日は祖母が見たい
特番が入るから、と私と兄の二人で かき氷を
食べていました。
すると、目の前に
“おたまじゃくし” が現れ くねくねと
泳ぎだしたのです。
大きさは大人の拳大くらいだったと
思います。
普通に考えれば、あり得ない事です。
大きさと言い、空中で泳いでいる事と言い
変だと思うのが普通だと思うのですが
私は何の疑問も持ちませんでした。
それどころか、おたまじゃくしの
尻尾を掴もうとしたのです。
なぜ、そんな事をしたのか
自分でも分からないのですが…
ところが、なかなか尻尾は掴めません。
私の目の前を左右に行ったり来たり
していて、私が掴もうとしても
驚くでもなく、逃げるわけでもなく。
なのに、一向に掴めないのです。
なんとか掴もうと私も必死に
なっていました。
兄:「桃子(私、仮名)、何してるの?」
私:「おたまじゃくし!おたまじゃくし捕まえるの!」
すると、兄は突然、走ってリビングに
行ってしまいました。
が、私はそんな事は お構いなしに
尚も必死で おたまじゃくしを掴もうと
していました。
『ピシッ』
突然、手を叩かれた私は
我に返りました。
驚いて振り返ると、私の後ろには
両親と兄と祖母が居て、厳しい表情で
私を見ていました。
私の手を叩いたのは祖母でした。
私:「なに? なに? なんか、みんな怖い…」
そして私は、仏間の部屋に連れて行かれました。
「桃子も 祖母ちゃんの後ろで手を合わせるんだよ」
そう言われて訳が分からないまま私も
祖母の後ろに座り、手を合わせました。
そして、祖母が言いました。
「あれはね、おたまじゃくしじゃないんだよ」と。
すると、兄が
「あれは、火の玉なんだぞ。桃子、連れて行かれるとこだったんだぞ」
と言いました。
私が おたまじゃくしを捕まえると
言っていると話したら、それは火の玉だと
祖母に言われたらしいのです。
(後から兄に聞いたのですが)
火の玉?…
黒いのに、火の玉?…