私の叔母さんが若い頃に体験した話です。
その日は仕事を終えて帰宅した後、疲れていたため早めに寝たそうです。
すると真夜中の2時頃、突然目が覚め、それと同時に身体が全く動かせなくなったそうです。金縛りというものです。
人生で初めての金縛りに戸惑いつつなんとか動かそうともがいているうちに、叔母さんは奇妙なことに気づきました。
自分は今、仰向けで寝ているため、視界には部屋の天井しか映らないはずなのですが、その時の叔母さんには、部屋全体の様子が手に取るようにわかったそうです。
首を動かすこともできないのに不思議なものだと部屋を見回していると、視界の左下に何かが入りました。
よく見ると部屋の隅で、髪の長い女性がこちらに背を向けて正座をしているのです。
叔母さんが驚いてその人から目を離せないでいると、その女性は、ゆっくりと首だけを動かしてこちらへ振り向こうとしています。
直感的に「見てはいけない」と思った叔母さんは、必死に目を逸らそうとしましたが、金縛りのため身体を動かすことができません。
その間にも女性の首は止まらずに振り向き続け、ついに女性の顔がはっきりと見えたそうです。
その顔は、紛れもない、叔母さん自身の顔でした。
それから叔母さんは気を失ってしまったらしく、気がつくと既に朝になっており、金縛りも解けていたそうです。
起き上がって部屋の隅を確認しましたが、もちろん誰もいませんでした。
それ以来、おかしなことは起こらなくなったそうです。
あの夜に見たアレは「叔母さん自身」か、それとも「叔母さんの姿をした別の何か」だったのか。
今となっては知る由もありません。