私は身近な人に良くない事が起きる前に
必ずピエロの夢を見ていました。
しかし、一度だけピエロじゃなく、犬が
教えてくれた事があります。

これは私が中一の時の春休み中の話です。
私には二つ上の兄が居ます。(当時、中三)
兄は地元の高校に進学が決まっていましたが
一番 仲の良かったA君は地元を離れる事に
なっていました。
これからは今までのようには会えなくなると
いう事でA君はウチに泊まり掛けで遊びに
来ていました。
小学生の時は私も何度か一緒に遊んだ事があり
気心知れた間柄でしたから三人で一緒に話したり
していたのですが…

ウチではアキラという名前の柴犬を飼っていました。
冬以外の日中は庭に放し飼いにしていましたが
冬と夜は当時にしては珍しく室内飼いでした。
A君が泊りに来た時、まだ雪が残っていたので
アキラも家の中に居ました。
元々半分は室内飼いでしたので来客にも慣れていて
私や兄の友達が来ても決して吠えたりしない犬でした。
勿論、A君にも。
ところが、その時は何故かA君に対して吠えたのです。
ずっと私達を見張っているように兄の部屋にも
リビングにも私達が行く所を付いて回り時折
A君に吠えていました。何度 注意してもダメでした。
今まで吠えられた事のないA君は戸惑いながらも

「俺、臭いのかなぁ〜」なんて冗談を言っていました。


そして数日後、荷物の整理が終わったからと言って
A君が読み終わった漫画本を兄に持って来てくれました。
翌日には進学先の地方に行くからと、家には上がらなかったのですが、
アキラが勢いよくリビングから出てきてA君に
ガチ吠えしました。
この時は母がガッツリ叱ってリビングに連れ戻したのですが
気不味い空気が流れてしまいました。
兄は申し訳なさそうに謝りましたが、A君は

「きっと、高校に行っても頑張れよって
喝 入れてくれたんだよ」と最後は笑顔で
帰っていきました。

そして それがA君との永遠の別れになってしまったのです。

翌日、A君は父親の運転する車で母親と三人で
進学先の高校がある地方に向かっていたのですが
事故を起こしてしまったのです。
母親は即死でした。A君は搬送先の病院で亡くなりました。
父親も大怪我を負いました。

夕方のニュースで私達は知りました。
兄と私は泣き崩れ、母と祖母は言葉を失っていました。


アキラが何度も遠吠えしていたのが強く心に残っています。
犬には人間

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