私が祖母の実家に里帰りしたときの話です。

実家は山奥にあり、住民もほとんどいませんでした。

この年、私は秋の季節に里帰りしたので、山は見事に赤や橙色に染まっていました。特にもみじは燃えるように真っ赤でした。

「おばあちゃん、もみじ綺麗だね〜。」

と、話しかけたのですが、祖母はあまり嬉しそうではありませんでした。というより、明らかにもみじの話題を避けていました。

私は不思議に思っていたのですが、しばらくしてから、祖母がその理由を話し始めました。



祖母がまだ小学生の頃、同い年のミカちゃんという子と祖母は親友だったそうです。

家が近いということもあり、祖母とミカちゃんはよく学校帰りに遊んでいました。

学校から家までは山道が続いていて、近くには小さな谷もありました。

祖母とミカちゃんはその日、あの谷の近くまで探検しようとなったそうです。

季節は秋と冬の境い目、辺りはすっかりと暗くなっていました。

谷の所までたどり着き、祖母は谷の下を覗き込みました。

向い側はもう暗くてあまり見えなかったそうですが、下は川が流れていて、ザァーッと流れる音も聞こえたそうです。

祖母とミカちゃんは普段見る事の出来ない光景に夢中になって下を見ていました。

そして、悲劇は起きました。

祖母はもう帰ろうと思い、立ち上がって戻ろうとしました。

その時、後ろで

「あっ」

本当に、小さな悲鳴だったそうです。

祖母が後ろを振り返ると、小柄なミカちゃんの体はどこにもありませんでした。

祖母は急いで谷の下まで行き、ミカちゃんを探しました。

小さな谷とはいえ、川まで行くのにかなり時間がかかったそうです。

ミカちゃんを見つけ駆け寄りましたが、もう虫の息だったそうです。

ミカちゃんは暗くてよく見えないのか、祖母の体をペタペタと触って確認していたそうです。


ペタッ…ペタッ…ペタッ…


ミカちゃんの小さな手は、液体で染まっていました。

祖母はそれが血だとすぐに気がつき、恐怖を感じたそうです。


結局、祖母はそこで座って泣くことしか出来ず、谷の近くを通った通行人が警察に通報。

ミカちゃんはその場で亡くなったそうです。

祖母の服は、ミカちゃんの血だらけの手形がたくさんついていたそうです。まるで真っ赤に染まったもみじみたいに。

両親はその姿を見て絶句したとたか。


それが祖母がもみじを避ける理由でした。


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