これは私が小学校の時に、実際に起きた話です。
別段、怖いわけではないと思いますが、その頃から私に霊感があり、この件の後からよくみえるようになりました。
私の家は、小さな団地で私の寝室からリビングの様子が良く見えます。
私の寝ているベッドは3段ベッドで、下の2段には妹が寝ていました。
特別、高い位置から見るリビングは、リビングで夜遅くまで起きている母の様子が良く見えます。
私から見えるのは母が座卓に向かって座り、何か書き物をしている背中。
そして右手前にあるのが廊下に続くドア。
母の正面にはちょっと低めの棚がありました。
この棚はガラス張りで、中身が見える様になっているのですが、私が寝室から見ている角度からだと、ちょうど鏡のように見えるのです。
その日は家族で出かけたので、すごく疲れていたのですが、疲れすぎて逆に眠れなくなってしまったようでした。
そして、なんとなく母を見ていたのです。
途中でふっと、違和感を感じました。
その違和感がなんなのかわからなくて目を凝らしたのですが、わからなかったのでやっぱり何も無いやと、母から目をそらして廊下に続くドアに視線を移しました。
すると、そのドアのちょうど前に立って、母をじっと見つめる女の人がいました。
その女の人は、室内なのに黒いハイヒールを履いて居ました。
黒いカバンを右肩に持っていて、髪は長くて綺麗でしたが、後ろで纏められていて、面差しはやや悲しそうでした。
その女の人は現れた時と同じように、気づいた時には居なかったのです。
翌朝、母に話した所、意外にもすんなりと信じてくれました。
なんと、私の家計にはみえる人が出やすいのだとか。
母もみえる人のひとりだそうです。
「怖かった?」
と母が聞くのですが、不思議と怖くなかったと答えました。
そのまた翌日のことです。
母にある電話がかかって来ました。
母の友人の1人が亡くなったという電話だったそうです。
「昨日言ってた女の人って、どんな人だった?」
急にそんな事を聞く母に、疑問を覚えながらも、その容姿を伝えました。
「ああ……〇〇ちゃんだ。そっか、最後に私に会いに来てくれてたんだ……。」
母はそれからしばらく、悲しいような嬉しいような顔で泣いていました。