これは、私が6歳の時に体験したことです。

実家は九州の田舎町にあるのですが、私の家は特に人口の少ない方にあって、周りは畑や林に囲まれています。
夜遅くまで起きて遊んでいる私に、母はよくこう言っていました。
「子供は早く寝ないと、幽霊が来て連れて行かれちゃうのよ。本当よ。だからお母さんが隣にいるうちに早く寝なさい。」
私は、そんなことあるわけない、と思いつつもなんとなく怖くて、文句を言いつつも大人しく眠っていました。

ある日のことです。

私は、夜中にふと目を覚ましました。
普段そんなことはなかったのですが、その日はお昼にいつもより長くお昼寝をしていたので、眠りが浅くなっていたんだと思います。
隣では母と父がぐっすりと眠りについていて、私ももう一度眠ろうと思って目を閉じました。
ですが、一度目を覚ましてしまうとなかなか眠れず、布団の中でもぞもぞと動いたり寝返りを繰り返したりしていました。
しばらくして、窓の外から聴こえる音に気がつきました。
ざん 、ざん 、ざん 、というような音で、人が地面を踏むような、機械が動いているような音でした。
ずっと、同じリズムで、ざん 、ざん 、ざん 、と聴こえてきます。
初めは、なんだろうと思って聴いていたのですが、ある事に気づいて急に怖くなりました。
音がだんだんと近づいて来ているのです。
それもどうも道を辿るように、移動しています。
私は怖くなって横で寝ている両親を起こしました。
そうすると父が目を覚まし、私にどうしたのと問いかけました。
「変な音が近づいてきてる。こわい。」
私がそう答えると、父はしばらく静かに耳をすましていましたが、
「音なんてしないよ。動物か何かいたんだろう。気にしないでいいから早く寝なさい」
そう言って、少し不機嫌そうにまた横になって、すぐにいびきをかいて眠ってしまいました。
それでもまだ音はしています。
私は布団に頭までぎゅっとくるまって、耳を塞ぎました。
それにも関わらず音は私の耳に入り、ついに家の前までやってきました。
それは行進のような音でした。
まるで、人が並んで、何十人も家の前を通り過ぎているような音がします。
そんなに広くもない上に、うちの前を通り過ぎればしばらくは街灯も家も、何もない道です。普段そんな数の人がこんな時間に歩くようなことは、まずありません。
私はただただ通り過ぎるのを待ちました。
やがて、音は遠くなり、全く聴こえなくなりま

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