霊的な話では無いですが数少ない体験談をお話しします。ダラダラと長いですがお付き合い下さい。

20年近く前、当時付き合っていた彼女とドライブに出かけた。何処に行って何をしたかは全く覚えていないが、よく使う瀬戸内海に近い県道を2時間近く西に走り、一頻り過ごした後、そろそろ戻るかと家へと車を向けた。

多分普段より海から離れ、知らない道を走っていたんだと思う。
音痴とまでは言わないが、それ程方向感覚に自信が無い私は、まずは来る時に使った県道まで戻ろうと半ば無意識に車を走らせた。
先に話したように瀬戸内を西に向かって走ると海は左手。帰る時は東に走り海は当然右手になる。その事を頭で考え、大きな道に出たらまず右折して県道に戻ればいいと、分かりやすい広い道は無いかと運転を続けた。

程なくして広くは無いが、かなり大きな川に沿った道にぶつかったので、これなら迷うことも無いかと右に折れた。多分まだ家までかなり距離があり、知らない道を延々と走るより早く慣れた道に戻りたかったのだろう。

道路は川を挟んで一方通行の一車線ずつだったと思う。走り難い程では無いが川に対して随分と細く古い道路だった。暫く走ると小さな漁船が沢山停泊しており、海に出たな、と思った。
だかおかしい。途中で必ずぶつかるはずの県道を見ていない。見落としたか、まだ先か、と考え、取り敢えずそのまま車を進めた。やはりおかしい。川幅はどんどん狭くなり、両脇の陸も少しずつ高くなっている。沿岸と言うより山間に入っていく様だ。

彼女を見ると少し不安そうだった。
いくら方向感覚に自信が無くても右と左を間違えはしないし、なんで?という気持ちが二人とも顔に出ていた。
「迷った?」と聞かれ、ちゃんと海に向けて走ってたよな?と言い訳を挟みながら「なんでか山の方に来とるな。まあ、川を逆に戻れば海に出るやろ」と橋を見つけ対岸の道で戻り始めた。

不思議な体験とかほとんど無い私は、さっきは間違えたとしても地理的に山から離れれば海に着くと、まだそれほど心配はしていなかった。多分彼女もそうだったと思う。
かなり時間を無駄にして日も落ちかけ、早くいつもの県道に戻りたいと少し飛ばし気味で走り続けた。

前にも後ろにも車の姿は無く、街灯も少なかったのかその時刻にしては暗く感じていた。この道に出て、引き返した港町までの時間よりさらに走ってもうそろそろかと思った時、その先の景色を見

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