私が小学1年生の時に知り合いのおばさんからもらった緑の服を着たピエロ。背中のネジは無いものの、自分で動く為、子供ながらに自動で動くものなのかと最初は思っていた。

友達のような存在で、どこか憎めない可愛い顔のピエロがお気に入りで、自分に妹が出来たように嬉しかった。当時は肌身離さず持ち歩いて、外に出ては友達に見せるのが好きだった。回すネジがなくとも動くピエロに友達も羨ましがったのを覚えている。

いつしか私の後をついて歩いてくるようになり、ペットのような存在にも思えて可愛くて仕方がなかった。ある時、ピエロの胸、人間でいうと心臓の部分に黒い染みが出来て、何度洗っても落ちなかった。

やがて高校生になり、部活や勉強などで忙しくなり、そのピエロの存在もすっかり忘れて、部屋にある小学生の時のおもちゃ箱の中に入れっぱなしになっていた。

久しぶりにおもちゃ箱の中から出してみると、とても懐かしく感じた。妹のように可愛がって大好きだった緑のピエロを眺めていると家に電話があり、そのピエロをプレゼントしてくれた知り合いのおばさんが心臓の病気で亡くなったとのことだった。おばさんが入院してたことすら知らなかった。ピエロの服の胸の染み、おばさんの心臓の病気...話が繋がっている気がした。

小さい時から私のことを可愛がってくれて大好きだった優しいおばさん。それから月日が経ち、社会人になった私。大人になって、ネジが無いので自分で動くはずが無いことくらい考えなくとも分かる。もうあのピエロは動かなくなってしまったが、今思えば、亡くなったおばさんはピエロになって私のことを見守ってくれていたのかもしれない。今もどこかで私を見守ってくれているような気がする。

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