大学生の僕は、いつも同じ夢を見る。駅前にある大きな交差点をたくさんの人と同じ方向に歩く夢。横断歩道の向こう側は人が誰もいないから、まっすぐ誰にもぶつからずに進むことが出来るんだ。僕は特に目的地があるってわけじゃないんだけど、歩いていけば何かあるような気がした。その交差点が、ひたすら長く、一本の道になって続いているんだ。

僕の周りの人は性別も年齢層も様々だけど、きっとどこかで出会ったことがあるような印象がある不思議な人たちだった。

「こんにちは」「僕の事を知ってるの?」「もちろん知ってるよ」「君は伊藤くん、今は19歳。」「誕生日は3月28日。」「高校生の時のバイトはコンビニね」「部活はバスケ部だね」「好きだった女の子の名前はユイちゃん。」「君はあの会社に就職する事になる」

たくさんの人が将来のことも含めて僕の質問に答えてくれた。夢の中ではみんな、何故か僕の名前や誕生日、高校生の時のバイト先や部活、卒業した学校、当時好きだった女の子の名前とか家族と友人、当時のクラスメートくらいしか知らないはずの僕の情報を詳しく知っているんだ。

もちろん僕は周りの人のことなんか誰も知らない。僕は気になって、夢の中で出会った男の人に聞いてみた。「この先には、何があるの?」「この先にとても綺麗な花が一輪だけ咲いてるんだ。その花を一番最初に見つけた人は...」ここで目が覚める。どうしてもこの先の夢が見れない。しばらくするとその夢を見なくなり、そんな夢を見ていたことさえ、すっかり記憶から消えていった。

それから2年が経った頃、僕は大学を卒業して小さな会社に就職することが出来た。早く仕事に慣れたくて、憧れる先輩に早く自分も追いつきたくて毎日必死で生きていた。そんな夕方の仕事帰り、いつも通り見慣れた大きな交差点を歩く。周りを歩く人もどこかで会ったような気がした。

...夢の中の交差点と一緒じゃないか。大学生の時に夢で見た人たちだと、すぐ思い出すことが出来た。そして、夢で言われた通り、僕はあの会社に就職をしていた。やはり、夢と同じように一直線に歩く。横断歩道の向こう側は誰もいない。特に目的地があるわけじゃない。

「この先には、何があるの?」
夢と同じように僕は夢で会った男の人に声をかける。その瞬間、空は暗くなり、腕時計を見ると夜の25時を越えていた。終電も終わっているのか誰も歩いていない。仕事が終わったのは夕方17時なのに、駅前には仕

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