もう5年くらい前のことです。その頃の俺は地元の大学に通っていました。
夏休みになって、遠くの学校へ行ってる原田から「帰省してるんで遊ぼうぜ。」
って電話掛かってきたんで、中学や高校の頃の友達4人で麻雀をすることにしました。
集まったのは清水の部屋です。清水の部屋は離れになってて、多少騒いでも大丈夫だったんで、高校の頃から良く溜まり場にしていました。
面子は俺と原田と清水と、あと石川って奴でした。

明け方まで麻雀やった後、気分直しに清水の車でドライブに行こうってことになりました。
「どうせならさぁ、あのサティアン行ってみよーぜ。」
清水がそう言い出しました。
そこは高校生の頃、俺たちの間で一瞬話題になったスポットでした。
清水の家から10キロくらい離れた山の中にある宗教団体の施設があり、丁度オウムの事件があった頃に宗教団体はそこから出ていって県内の別の場所に移りました。
その宗教団体はある巨大な宗教団体から枝分かれしたもので、そういったケースの典型的なパターンを踏んでいました。
すなわち、教義の正当性を主張するために本家の宗教団体を激しく糾弾し、世間の理解が得られないと知ると、今度は自分たちは迫害されていると思い込み、逃げ出すように人目の着かぬ場所に拠点を据える。そんな事を繰り返していた訳です。

一連の話を清水から聞いた俺たちは、見たこともないその施設を勝手にサティアンと名付け、しばらくの間カルトな妄想を膨らませていました。
そこへ行ってみようぜ、みたいな話は何回かあったのですが、工房で免許を持っていない俺たちは、その施設へ行く交通手段を持っていなかったのです。
しかし、今の俺たちには清水の車があります。
「お前、道知ってるのかよ。」
「林道に入ったら一本道だって話だから、大丈夫だろ。」
「誰か居たらどーすんだよ。」
「じゃあ武器持ってこーぜ。」
一旦車を降りた清水は、部屋からバットと木刀を一本ずつ持ってきました。
「…いざって時のために、エンジンは掛けておこうぜ。」
清水と石川はノリノリでした。
もともとこいつらはイケイケのDQNで俺や原田は振り回されることが多かったのですが、この時ばかりは何となく頼もしい感じがしたのも事実です。

林道に入る頃には夜が明け始め、あたりはボンヤリ明るくなってきました。
山の中を20分くらい走ると、途中に古ぼけた看板があり、その指し示す方向へ進むと急に視界が開けました。
車が何

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