昔、幼い兄弟がいました。兄は小学生、弟はまだ3歳ぐらいでした。兄弟の父親は居らず、母親は毎日朝早くから夕方まで働いて、晩御飯を作る頃には帰ってくる生活でした。
母が帰るまでの間、弟は一人で留守番をし、兄は学校が終わると直ぐに家に帰り、弟の面倒をみる賢い兄弟でした。
兄は学校から帰ると必ず家の玄関の鍵を閉めていました。二人は母親から「良い?約束よ。玄関の戸は必ず締めなさい。お母さんやお婆ちゃんは鍵を持っているから、どんな人が訪ねてこようと、決して鍵を開けてはダメよ。特に"きんけまん"は貴方達を騙して、中に入ってきて貴方達の顔お食べてしまい。自分と同じ"きんけまん"にしてしまい、二度とこの家には戻ってこれなくなっていまうのよ。」といつも言い聞かせていました。二人はその言いつけを守り、必ず鍵を開けることはありませんでした。
ある日の事、二人が留守番をして母親を待ってる頃、玄関を叩く音がしました。
近づいて尋ねると「オカアサンヨアケテカエッテキタワヨ。」と何とも奇妙な声で言ったのです。
兄と弟は奇妙に思い、覗き穴からその姿を確認しました。それはとてもとても、人とは思えない姿をしていました。
腕や足は細長く、首も異様に長い上、頭は子供ぐらいの大きさでした。
目は大きく、中は真っ黒で、口は頬まで避けていました。兄弟が覗いているのに気が付いたのか、「オカアサンヨアケテカエッテキタワヨ。」とふたたびこちらを向いて言いました。
兄弟は怖くなりましたが、兄が勇気を出して「お前は"きんけまん"だ!騙されないぞ!帰れ!」と言いました。
それを聞くと"きんけまん"は「バレテシマッタ……」と言って、その場を去りました。兄弟はホッとして、又大人しく母親を待つことにしました。
そして暫く二人で遊んでいて、さっきの事を忘れかけていた頃、今度は玄関で女の人の声がしました。「お母サンヨあケテ帰ってキたわヨ。」と聞こえてきました。しかしさっきとは違い、少し母親の声にも似ていました。兄弟は又、覗き穴から確認すると、腕や足はいつもの母親の物で首も長くはありませんでしたが、やはり先程と同じく頭は小さい上、目は大きく中は真っ黒で、口は頬まで避けていて、それは"きんけまん"でした。
"きんけまん"は覗き穴から見る二人に不気味な笑顔を浮かべなが