私には、子供の頃に空を飛んだ記憶があります。
絶対にあり得ないのはわかっているんですが、夢とは思えないくらいリアルな記憶なんです。
飛んだのは物心ついたばかりの頃、3〜4才くらいでした。たしか5回ほど飛びました。
飛んだのは私の家の中だけで、クルクル旋回しながら母を見下ろしていました。
私が飛んでいる時、母は決まって土下座するような格好でうずくまっており、どうやら飛んでいる私を怖がっているようでした。
5回のうち2度ほど、母の隣に白髪のおじさんが座っていた記憶もあります。そしてなぜかそのおじさんが医者であることを覚えています。
私が飛ぶのが珍しくて、偉いお医者さんが見に来たのだと思っていました。
あり得ないのはわかっているのですがとにかくリアルな記憶で、当時の母の服装や、タンスのうえやカーテンレールの上にホコリが溜まっている光景もきっちり覚えています。

大学に入って初め聞かされたのですが、私は幼いころ喉に原因不明の巨大なポリープができた事があるそうです。
まだ体が小さいため手術まで1年待つように言われたそうなのですが、手術を待つまでに2ヶ月に一回ほど40度近くの熱が出たそうです。
「あんまり苦しそうな時にね、夜中にお医者さんに来てもらったとこがあるんやからね」
母にそう言われて、ふと空を飛んだ記憶のことを思いだし、母にその事を告げました。
すると母は驚いて、「あんた熱下がったらよう空飛んだっていいよったよ!よう覚えとるね。」と言いました。

あの時飛んでいたのは、私の魂だったのかもしれません。母は怖がってうずくまっていたのではなく、寝ている私の体を心配して見下ろしていたのかもしれません。
もしあのままどこかへ飛んで行ってたらと思うと怖くなります。

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